2018年

12月

23日

平成31年度税制改正大綱 配偶者居住権(2)

 

前回の続きです。

今回の税制改正大綱にて「配偶者居住権」の評価方法が記されました。

 

 

<居住用建物の評価>

 

(1)配偶者居住権の評価方法

   建物の時価 - 建物の時価×A

  

  A=(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

 

  ※1 残存耐用年数・・・所得税法の耐用年数(住宅用)×1.5-居住建物の築後経過年数

 

  ※2 存続年数・・・次のケースに応じて、それぞれの年数

      ①配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合…配偶者の平均余命年数

 

      ② ①以外…遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の存続期間の年数

            (配偶者の平均余命年数を上限とする)

 

(2)所有権の評価方法

   

   建物の時価 - 配偶者居住権の価額

 

 

<居住用建物の土地の評価>

 

(1)配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利

   土地等の時価 - 土地等の時価×続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

 

(2)居住建物の敷地の所有権等

   土地等の時価 - 敷地の利用に関する権利の価額

 

 

2018年

12月

20日

平成31年度税制改正大綱 配偶者居住権(1)

 

平成3076日に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立し、同年713日に公布されました。

 

  今回の改正内容は下記。

  1. 配偶者の居住権を保護するための方策
  2. 遺産分割に関する見直し
  3. 遺言制度に関する見直し
  4. 遺留分制度に関する見直し
  5. 相続の効力に関する見直し
  6. 相続人以外の貢献を考慮するための方策

 

施行期日は、内容により決められており、上記(1)の場合は、「公布の日から2年を超えない範囲で政令で定める日」となっています。

 

つまり、平成30713日の公布の日から2年なので、平成32713日までの間に施行されるということになります。

 

 さて、今回の税制改正大綱にて「配偶者居住権」の評価方法が記されました。

 

評価方法のお話の前に、今回は、そもそも「配偶者居住権」とは何かを軽くご説明します。

 

「配偶者居住権」は2つあります。

 

 

 <配偶者居住権 新民法1028条~1036条>

 

 今までは、配偶者が居住建物を取得すると、それだけで法定相続分を超えてしまい、現預金を相続することが出来ず、その後の生活に不安が生じるというケースがありました。

 

 

そこで、配偶者の居住建物を、居住する権利である「配偶者居住権」と、その権利をの制約を受ける「所有権」とに分離して、配偶者が「配偶者居住権」を相続することで、他の現預金の相続を可能にするため今回の改正がありました。

 

「配偶者居住権」は登記をすることができます。

配偶者は、居住用建物の所有者に「配偶者居住権」の設定登記の手続きをするように請求できます。

 

 

<配偶者短期居住権 新民法1037条~1041条>

 

 今までは、配偶者が被相続人から無償で居住していた場合(使用貸借)は、遺産分割協議の成立までの間は住み続けることができるという判例の取り扱いが確立されています。

 

しかし、このケースだと、この居住用建物が第三者に遺贈されていた場合は、配偶者は相続発生日より居住権を失ってしまう。

 

そのため、民法改正により、配偶者は最低でも6ヶ月は住み続ける事が出来る制度が創設されました。

 

 

 

 

2018年

12月

16日

平成31年税制改正大綱 空き家税制

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例が、老人ホーム等に入所したことにより居住の用に供されなくなった家屋及びその敷地の用に供されていた土地等は、一定の要件を満たす場合に限り、3,000万の特別控除の適用が可能となります。

 

現行制度は、平成31年12月31日まででしたが、4年延長されることになりました。

改正は、平成31年4月1日以後に行う譲渡から適用です。

               

現行制度の要件に加え、下記要件が追加となります。

 

(1)被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所していたこと。

                          

(2)被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。                             

       

            

<現行制度のおさらい>https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を譲渡し、一定の要件に該当するときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。

                    

<一定の要件>

1) 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋・土地等であること。  

2) 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。

3) 区分所有建物登記がされている建物でないこと。

4) 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

5) 売った人が、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

6) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

7) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。

8) 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

9) 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

10) 売却代金が1億円以下であること。 

11) 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

12) 同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。

13) 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。(特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。)  

 

 

 

 

         

 

2017年

9月

05日

タワーマンション節税について

 

平成29年の税制改正にて、タワーマンションの固定資産税の改正がありました。

 

「タワマン節税」と言われているタワーマンション購入による節税対策。

 

 

これは、相続税だけでなく、固定資産税、不動産取得税も節税になるという意味なのですが、今回、改正が入ったのは地方税である固定資産税。

 

税率は変わりなく、固定資産税評価額の計算方法が変わったので、固定資産税評価額を元に計算する不動産取得税にも影響が及びます。

 

 

では、相続税は?

 

というと、実は変わりません。

 

相続税の計算は、財産基本通達   に基づいて計算するのですが、その計算方法は下記となっています。(家屋のみの説明です)

    

(区分所有財産)

3 区分所有に係る財産の各部分の価額は、この通達の定めによって評価したその財産の価額を基とし、各部分の使用収益等の状況を勘案して計算した各部分に対応する価額によって評価する。

 

「使用収益等の状況を勘案」 とありますが、マンションの場合、所有者の占有面積で按分します。

 

つまり、

 

一棟の固定資産税評価額×占有面積=所有者の固定資産税評価額(A)

 

となります。

 

 

 (家屋の評価)

89 家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平3課評2-4外・平16課評2-7外改正)

 

 

 所有者の占有面積で按分した上記Aの固定資産税評価額×1.0=相続税評価額

 

相続税は、あくまでも一棟の固定資産税評価額を占有面積で按分して、所有部分の固定資産税評価額を計算し、(倍率1.0を乗じて)相続税評価額とします。   

 

つまり、一棟当たりの固定資産税評価額が変わらない今回の改正は、相続税の計算には影響しないということになります。

 

 

今回の固定資産税の改正内容をおさらい。

<対象となるタワーマンション>

 

    1.平成29年1月2日以後に新築

 2.高さ60m超

 3.平成29年4月1日前に最初の売買契約が締結された人の居住用占有部分を有するものを除く

 

  

<改正された計算方法>

 

マンション一棟の固定資産税評価額は変わらず、階数ごとに占有床面積を調整して、階数が上がるほど固定資産税評価額が高くなるように改正。

 

 

具体的に見ていきます。

 

 改正前の固定資産税の計算>

 

一棟の固定資産税評価額×占有床面積=その所有者の固定資産税評価額(A)

 

A×1.4%=固定資産税(都市計画税除く )

 

 

<改正後の固定資産税の計算>

 

一棟の固定資産税評価額×調整後の占有床面積=固定資産税評価額(a)

 

1.4%=固定資産税(都市計画税除く )

 

 

要は床面積を修正することでフロアーごとの固定資産税評価額を変えるということです。

  

ということで、タワーマンションを利用した相続税の節税は、まだ有効だということになります。

しかし、当ブログでも以前書きましたが、度を過ぎた節税対策は、「財産基本通達6項」の適用をする旨の国税庁の見解を示しているので注意が必要です。

 

(この通達の定めにより難い場合の評価)

6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

 

2017年

9月

04日

自社株評価(類似業種比準方式の改正)

 上場していない会社(取引相場のない会社)の株式の評価は、独特な計算を行います。

評価する会社の状況に応じて、計算の方法が変わってくるのですが、

株価を下げるために利用されることの多い「類似業種比準方式」について2017年の税制改正にて改正が入っています。

(平成29年1月1以降の相続、贈与等から適用されています)

 

この方式は、上場会社と同じような株価評価になるように作り出された計算方法なのですが、

改正点は、下記3つとなります。

 

1.適用する「類似業種の株価」の選択株価の追加

  (4種類の株価から選択 → 5種類の株価から選択)

 

2.類似業種の株価、利益、純資産に連結決算を加味する

 

3.類似業種比準方式の計算式の改正

 

今回は、3番目について説明します。

 

改正前の計算式は、下記でした。

× ×  
B 0.7(注2)
       5  

 

「A」=類似業種の株価
「Ⓑ」=評価会社の1株当たりの配当金額
「Ⓒ」=評価会社の1株当たりの利益金額
「Ⓓ」=評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)


「B」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額
「C」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額
「D」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)


(注1) 類似業種比準価額の計算に当たっては、

Ⓑ、Ⓒ、Ⓓの金額は、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額として計算することに留意する。

 

(注2) 大会社:0.7 中会社:0.6 小会社:0.5

 

類似業種の株価は、国税庁が発表している上場会社の業種ごとの株価です。

 

そして、CとⒸの利益ですが、3倍にしています。

似たような業種の上場会社の1株あたりの利益金額のうち、評価する会社の1株あたりの利益金額の割合を3倍しています。

 

要するに、評価会社が利益が出ている会社であれば、3倍するので、株価は高くなり、

逆に損失会社であれば、株価が下がります。

 

これを利用して、株式を譲渡、贈与、事業承継、相続対策として、退職金等の多額の損金を出し、赤字にして株価を下げるということを行ってきた会社も多かったことでしょう。

 

しかし、その手法が今後は使えなくなるということです。

そもそも、そういった手法が使えてしまうことの方が、正しく株価を計算出来ていないということだと思うのですが・・

 

改正内容ですが、この3倍がなくなり、下記計算式となりました。

 

3倍がなくなりました。

 

よって、今後は、利益が出ている会社が、今までよりも株価が下がります。

通常、類似業種比準方式で計算した株価は、純資産価額よりも低くなることが多いです。

 

しかし、利益を出している会社は、類似業種比準方式の計算式の「利益3倍」の影響で、

類似業種比準方式で計算した株価 > 純資産価額となる傾向がありました。

 

これが解消され、類似業種比準方式の方が株価が低くなる可能性が高いです。

現に、顧問先様では、今まで純資産価額の方が低かったですが、類似業種比準方式の株価の方が下がりました。

 

損失を出して株価を下げるという株価対策は、改正前ほど有効には使えなくなりますね。

 

注意:

改正により、分母が「5→3」になっていますので、配当金額や純資産価額の影響も受けることを考えますと、必ず下がるというは言い切れませんので、一度計算してみてください。

 

 

2017年

2月

10日

預貯金の分割方法の取り扱いの変更

 

今まで相続財産の中に預貯金や債権、債務があった場合は、相続の発生により各相続人に当然に分割承継されるため、遺産分割の対象とならず、例外的に、相続人全員の合意があれば遺産分割の対象とするというのが今までの実務上の取り扱いでした。

 

つまり、遺産分割を待たずに預貯金は法定相続分で当然に分割が可能でした。

 

 その根拠は、民法にあります。(民法898条、899条、427条参照)

  

 預貯金は、可分債権に含まれます。

 可分債権とは、性質上分割が可能であり、分割給付を目的とする債権を意味します。

 例えば、売買代金や預金などの金銭債権は可分債権です。

   

金融機関からの借入金は、可分債務に含まれます。

 可分債務とは、性質上分割が可能であり、分割給付を目的とする債務を意味します。

 

分けることの出来る「可分債権」「可分債務」は、相続人の意思表示がなければ、当然に法定相続分で相続することになるのです。

 

例外的に、相続人全員の合意があれば、預貯金や借入金も法定相続分以外での分割が可能ですが、相続人の1人でも遺産分割の対象とすることに反対する人がいると、法定相続分で分割することになります。

  

しかし、平成281219日、最高裁の判例により、この従前の取り扱いとは違う決定がされました。

 

「遺産相続の際に、被相続人名義の預貯金が遺産分割の対象となる決定」がされたのです。

 

 この判例では、被相続人の生前に多額の生前贈与(5500万円)を受けていた事例で、

 他の相続人が、この生前贈与も考慮して(特別受益として)、遺産分割の対象とすべきとして審判を申し立てたのです。

 

今までは、生前に預貯金等の生前贈与を受けている相続人が、預貯金等を遺産分割の対象とすることに反対すれば、特別受益として生前贈与された預貯金等を遺産分割の対象とする(持ち戻す)ことは出来ませんでした。

 

しかし、今後はこの判例により、遺産分割の対象としなければならないケースが増える事でしょう。

 

 

 今回の判例は、「可分債権一般についてまで遺産分割の対象となる」と判断したものではありませんので、被相続人の相続財産や相続人等の状況によって個々に判断されるものでしょう。

  

いずれにしても、遺産分割の前に預貯金等を法定相続分で払い戻すことは法律上可能ですが、実務的に金融機関では、「遺産分割の成立」「相続人全員の同意」がなければ払戻しには応じません。もっとも、金融機関によっては、相続人の生活資金等の事情を考慮して、払い戻しが可能なケースもあるようですが・・

 

  

<参考>

 

898

 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

 

 899

 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

 

 427

 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

 

2016年

12月

28日

従業員持株会と役員持株会の活用

 

先日、お客様の役員持株会従業員持株会の設立のお手伝いをしました。
「持株会」は、上場企業ではあたり前の制度となりつつありますが、上場していない中小企業にはあまり馴染みがないかもしれません。

最近では「相続対策」として、非上場会社でも持株会制度を導入する会社も増えてきました。
それは、“オーナーの相続税を下げる目的” や、“事業承継をスムーズに行う目的”と2通りあります。

オーナー所有の株式を親族へ譲渡すると、高い評価方法を採用しなければならず、
“譲渡するにも資金がない”  ”贈与すれば多額の税金がかかる” という自体に。

これに対して、オーナー所有の株式の一部を持株会へ譲渡する時の評価は、配当還元方式で計算することができるので、
持株会への移動時に多額の税金がかかることがなくなり、更に、オーナー所有の株式が減るので相続税も必然的に下がる。
これが「相続税を下げる目的」で持株会制度を導入するケースです。

もう1つの「事業承継をスムーズに行う目的」は、
承継者が親族でない場合です。
親族ではない役員や従業員が承継する場合に利用する方法です。
承継候補者が、”気が変わるかもしれない” ”資質がないかもしれない”
そんな状態で株式を直接持たせ、事業承継を辞退した場合は、後々トラブルになる可能性がありますね。
そこで「持株会」の導入です。
持株会を通して株式を持たせるのです。
間接的ではあれ、株式を所有することで経営者としてのプロ意識の向上に役立つのではないでしょうか。
(最終的にはMBOやEBOを実行する。)

しかし、注意して欲しいことは、
「相続税を下げる目的のためだけに持株会制度を導入しないこと」です。

運用に適した会社と、適さない会社があります。

従業員持株会は、特に下記3つを満たす会社が導入に適していると思います。
1.ある程度の数の従業員がいること
2.毎期必ず配当を出せる会社
3.将来性がある会社や安定した会社

もちろん、業績が低迷する年もあるでしょう。
しかし、会社に魅力を感じていれば、従業員も株式を所有し続けるでしょうし、退職者がいてもまた新人が入社するでしょう。

従業員が数名の会社で持株会を導入すると、業績低迷して配当が出せなくなると、株式を持っている魅力がなく(もしろ会社倒産により無価値となるリスクの方が高く感じる)、持株会を脱退してしまいます。
すると、脱退者の株式は行き場を失い(誰も買わない)、持株会は会社からの借入金で退職者から株式を買い取ります。新たな加入者がいれば、その資金で借入金は返済できるかもしれませんが、いなかった場合は、持株会が機能しなくなります。

その場合は持株会の解散となるでしょう。
しかし問題は、会社からの借入金です。
持株会は民法第667条第1項の組合です。
持株会の債務は、組合員の共有となります。
つまり、本来は組合員が負担しなければならなくなるのですが、設立目的は福利厚生目的ですから、たいていは会社が債務免除をします。
しかし、この債務免除は
「組合員が負担すべき債務を免除された」ということで、組合員の給与扱いとなります。
組合員は、現金を受け取っていないのに、所得税等を払わされるのです。


たとえ持株会に適した会社であっても、安易に設立することは避けて下さい。
設立自体はとても簡単なのですが、持株会の設計はとても重要です。
税務的な問題は当然ありますが、税法だけではありません。
民法、会社法、信託法、金融商品取引法、労働法など多くの法律が絡んできます。
必ずプロに相談するようにしてください。

 

2015年

1月

05日

相続税の大改正年度が始まりました!


皆さん、明けましておめでとうございます。
税理士、ファイナンシャルプランナーの松島由紀子です。

いよいよ平成27年度が始まりましたね。

相続税の大改正の年度です。
今後、相続が発生した場合には、基礎控除額が大幅に減りますので注意が必要です。

孫への相続時精算課税制度の利用も可能となります。
贈与者の年齢も65歳から60歳に改正されています。

教育資金贈与制度もあります。
平成27年度の税制改正では、通学定期券代や留学渡航費も含めるなど教育資金の範囲も広がる予定です。
結婚、出産、子育て資金の贈与制度も大綱で決定されています。

しかし、安易にこれらの制度を使うことはやめましょう。

相続時精算課税制度は、暦年課税制度との有利判定をしておくことをお勧めします。
孫への利用は、2割加算の影響も考慮しましょう。

教育資金贈与や、今後予定されている結婚子育て資金贈与は、
一定の年齢になった時に残金がある場合は、その時点での贈与となります。

一定の年齢になる前の贈与者死亡の際の
残金に対する相続財産への加算は、
教育資金贈与と、今後予定されている結婚子育て資金贈与では取り扱いが違います。

結婚子育て資金贈与は、贈与者死亡時の残金が相続財産となりますので相続税対策にはあまり使えませんね。
ただし、2割加算はありませんので、一般贈与よりは使えるかも!?


このように、
その制度そのものだけを見ると魅力のある制度でも
全体を通して考えると、結果的に不利となることもあるのでご注意下さい。

ただ、税負担の有利不利だけで決められないのが「相続」であり、「争族問題」でもあるのですが…


今後は、税制のみならず、事業承継制度や信託制度など、
生前贈与をしやすいような制度を、利用しやすいよう整備されてくるでしょう。

こういった制度の利用は、情報は溢れていますが複雑なので専門化に相談することをお勧めします。

2014年

10月

03日

年金形式で受取る生命保険金の受給権

 

東京高裁の判決を受けて、「生命保険金の受給権」の相続税評価の方法が変更になります。

先月、9月に国税庁HPに変更する旨、公表がされています。

 

今回変更の対象となる「生命保険金の受給権」とは、

 

● 死亡保険金の受取人が、「年金の種類」「年金の受給期間」などを指定することが

  契約により予定されている生命保険契約で

 

● 死亡保険金の受取人が、相続開始後~受給開始前までに、「年金の種類」「受給期間」などを

  指定した場合の

 

● 支払請求権(受給権)の価額

 

について変更されました。

 

変更前 → 相続開始時に解約するとした場合の解約返戻金の金額で評価(相続税法第22条)

 

変更後 → 定期金に関する権利の評価(相続税法第24条)

 

これにより、税金を多く納めていた場合は、この変更を知った日の翌日から2か月以内

「更正の請求」をして還付を受けることができます。

 

ただし、以下の期間が経過した相続税又は贈与税については、還付は受けることは出来ません。

    相続税  法定申告期限から5

    贈与税  法定申告期限から6

 

 

相続税法第24条は、税制改正により、

平成2341日以降に相続又は贈与により取得した「定期金に関する権利」と

それ以前に取得したものとでは、評価方法が変わっています。

 

今回の変更により還付を受けることが出来る可能性があるのは

恐らく、改正前の平成2341日前に取得した「定期金に関する権利」だと思われます。

 

改正前の「定期金に関する権利」の評価は、改正後よりも低い評価額だからです。

計算してみないと一概には言えませんが。

2014年

8月

07日

二世帯住宅

久しぶりの更新になってしまいました。

時間って、あっという間ですね(^-^;


さて、今朝の日経新聞に、
二世帯住宅の改正のことが載っていますね。

以前、このブログでも取り上げましたが、
改正により、独立型の二世帯住宅も「同居」とするとなりました。
http://matsushimakaikei.blog.fc2.com/blog-entry-20.html

「同居」扱いだから、土地の全てが、
小規模宅地等の特例の適用となり、
土地の評価が80%減となるとお伝えしました。

しかし、これは
建物の所有が「共有」か、「区分所有登記」かで
減額出来る部分が変わってきます。
それが今朝の日経新聞の記事です。

マンションでは良く聞く「区分所有登記」ですが、
一軒家でも「区分所有登記」をする場合もあります。

その場合は、「同居」とはなりません。

「共有」=同居
「区分所有登記」=別居

となります。

例えば、父、母、息子夫婦で二世帯住宅に住んでいるケースを考えてみましょう。
※%表示は所有割合です。

(ケース1)

| ̄ ̄ ̄ ̄|
|父100% |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
父100%

このケースでは、「区分所有登記」の問題は起こりませんね。
何の問題もなく、「同居」です。



(ケース2)
_____
|父50% |
|息子50% |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
父100%

このケースは、建物の息子所有の50%部分の登記が、

「区分所有登記」の場合は、
土地の1/2は、80%評価減
残り1/2は、評価減はありません。(自用地評価)

「共有」の場合は、
土地の全てが、80%評価減です。


1/2が評価減の対象になるか否かによって、
大きく評価額が変わりますね。

これから二世帯住宅を建てようと考えてる方は、
登記を「共有」にしておくのが無難かもしれません。

しかし、独立型の二世帯住宅を「区分所有登記」しておき、将来、二世帯住宅の一世帯部分だけを売却したいという場合もあるでしょう。

今は二世帯だけど、親がなくなったら
親が住んでいた部分は売却をするかもしれない…

そんな時は、「区分所有登記」をしておいた方が良いでしょうね。

万が一、相続が争族となってしまった場合などの対策として…

2013年

10月

01日

非嫡出子の法定相続分

平成25年9月4日 最高裁により
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条第4号の但し書きが
憲法14条に反しているという違憲判決が出たニュースは皆さん記憶に新しいと思います。

民法900条第4号の但し書きには、こう書いてあります。

「法律上結婚していない夫婦から生まれた子供の法定相続分は、法律上結婚している夫婦から生まれた子供の法定相続分の半分ですよ」

「法定相続分」というのは、
民法で決められた財産の分割の割合です。

分割協議により、違う相続分を決めても良いし、
遺言書があれば、その通りの相続分にすることは当然問題ありませんが、
この「法定相続分」をベースに相続の話し合いが行われることが多いです。


<夫婦+子供1人の家庭の場合>
夫が亡くなった場合の「法定相続分」は、
妻が1/2、子供が1/2

図1


<これが嫡出子が1人いた場合>
非嫡出子の相続分は、1/2×1/3=1/6
嫡出子の相続分は、1/2×2/3=1/3

図2

これが今後は、平等となるということですね。


相続税の計算は!?

相続税の計算においても、民法の「法定相続分」の割合が影響してきます。
相続人間で、協議をして「法定相続分」以外の割合で財産を分割したとしても
相続税の計算では、「法定相続分」で分割したとして計算されます。

今回、民法900条が違憲とされたことで、相続税の計算についても
国税庁より、その対応方法が発表されています。

平成25年9月5日以後に申告するものについては、嫡出子も非嫡出子も平等に扱い相続税も計算する。
この「申告」には、申告期限を過ぎて行う期限後申告や修正申告も含みます。

じゃあ、違憲を理由に更正の請求(税金払い過ぎてるから返してねという請求)をすることは出来るのか?

出来ません。

ただし、既に申告済みのものであっても、税務調査により財産の申告漏れや評価間違いが見つかった場合や
遺産分割の協議が確定したため行う修正申告や更正の請求では、嫡出子も非嫡出子も平等として計算し直すとのこと。

違憲のみの理由だけでは、相続税の計算し直しは出来ないという事ですね。

また、遺産分割のやり直しは贈与になりますので注意して下さい。

2013年

5月

17日

二世帯住宅で節税?

消費税が平成26年4月から8%に上がります。

これに伴い、駆け込み需要を狙ってバンバン、マンション建設が進んでますね。
住宅街を歩けば、建て売り住宅の建設も増えているのが分かります。

相続税の増税を見越して、
「二世帯住宅を建てて相続税節税」
というような新聞広告も見かけます。

これは、どういう事なのでしょうか!?

相続税の基礎控除が下がると、東京に自宅を所有しているだけで相続税が発生するかも。

と言われています。

例えば、父親所有の自宅敷地と建物があり、
父親が亡くなった場合、これらの敷地と建物を誰が相続するかで自宅敷地の評価額が変わります。

母親(父親の奥さん)が相続した場合は、
自宅敷地は80%評価減が出来ます。

しかし、子供が相続した場合は、
下記の条件のいずれかの場合に限り、80%評価減となります。

1.生前、父親と同居していて、今後もそこに住む

2.生前、父親と別居してるが、
子供所有又は、子供の配偶者の持ち家に相続直前3年間は住んでいない家なき子



今回、上記1の同居に関して改正が入っています。

同居とは、一般的に
1つ屋根の下で寝起きを共にし、生計を一にするもの。
つまり、お財布が一緒ということです。

完全にお財布が一緒ということは、
いくら同居でもないような気がしますが、
例えば食費や光熱費などをまとめて誰かが支払っている状態は、お財布が一緒と捉えて良いと思います。

二世帯住宅の場合、
同居と認められるためには、
玄関が1つで、中でつながっており、
互いに行き来が出来る状態の場合に限られていました。

つまり、玄関が2つある完全独立型の二世帯住宅は
同居と認められず、評価減が出来るのは父親が住んでいた部分のみでした。

これが、改正後には、
玄関が2つある完全独立型の二世帯住宅でも、同居とされ、
評価減が出来るようになったのです。


既に持ち家買っちゃったよ~
という方は、自分の子供(親からみたら孫)に相続させる遺言を残すのも1つの手かもしれません。
孫への相続も80%評価減が出来るからです。

孫への相続は、相続税の2割加算の対象となりますが、
場合によっては、評価減の減額の方が大きくなり、トータルでの相続税を押さえることが出来るかもしれません。


まずは、親の死亡時に相続税が発生するのかを確認した上でとうするのかを考えましょう。

相続税のシミュレーションは、各専門家がやっています。
もちろん、わたくしも。

2013年

2月

07日

自宅だけで相続税がかかる!?

 

税制改正大綱によると、
平成27年から相続税の基礎控除額が大幅に減らされる予定です。


これにより、地価が高い都内に自宅を所有しているだけで、相続税がかかってきてしまう可能性が高いと言われています。


その代わりにと、緩和される予定なのが小規模宅地等の特例です。


居住用の土地や借地権については、相続税の課税価格から、その土地等の価格の8割を減額してよいという特例が小規模宅地等の特例です。


今は、居住用の土地等であっても240㎡までしか適用されませんが、これが330㎡まで広げますという事ですね。

都内に自宅用の土地を所有している人は、ほとんど対象になります、と今朝の日経新聞にも載っていました。

しかし…

税制改正大綱を初めて見た時から思っていましたが、
都内に240㎡以上の土地を所有している人が、どれだけいるのだろう。


つまり、都内に土地を所有する多くの人は、この緩和措置の恩恵を受けることはないという事ですね。


つまり、緩和措置の恩恵は受けれずに、基礎控除の減額による負担が増える人が多いという事ですね。


しかし、そもそも自宅の土地建物の所有だけで相続税の基礎控除を越えるのでしょうか?


具体的に見てみましょう。

たとえば、お父さんが自宅を所有し、お父さん、奥さん、子供一人の三人家族の場合

お父さんが死亡すると相続人は二人ですね。
奥さんと子供

改正後の基礎控除は、3000万+600万×2人
4200万になります。

自宅の土地が60㎡だと、
土地だけで4200万となるには、1㎡70万です。

相続税の計算は路線価をベースに計算します。
路線価が1㎡70万以上の場所であれば、土地だけで相続税の基礎控除を越える可能性が高いという事ですね。


小規模宅地等の特例を受ける場合は、70万÷2割=350万
以上の路線価である場所でなければ基礎控除を越えない!?
(330㎡以下であることを前提)


その土地の形や場所によって、土地の評価額は変わりますので絶対とは言えませんが。


また、建物も相続財産になりますので、築年数が浅い自宅の場合は土地だけでは判断できませんね。

土地が狭くても、金融資産をたくさんお持ちの方も要注意です。


路線価は国税庁のHP から見れますので、気になる方は見て下さいね。

2012年

7月

28日

7月28日(土) 税理士 笹岡宏保先生のセミナーに参加しました

 

相続で有名な笹岡先生のセミナーに初参加してきました。

 

セミナーの内容は

「借地権税務の理解と検討」

 

簡単に言いますと、

民法上の借地権と税法上の借地権の違いと、

それらをベースにした実務上の問題点などについてです。

 

実際の内容はとてもボリュームがありまして、

とても1日では理解しきれるものではないと思いますが、

それを1日で分かりやすく説明して下さいました。

 

何度、目からうろこが落ちたことか・・

 

断片的な知識がようやく繋がりました!

 

と同時にまだまだ勉強不足を感じた次第です。。

 

 

また、笹岡先生は印象的な言葉を残して下さいました。

 

「しっかり勉強していれば、価格競争もTPPも心配することはない」

 

こんなに勉強している士業は他にいないのだから。

 弁護士法も民法も、改正はほとんどないが、税法は毎年改正がある。

それを勉強しているのだから胸を張っていい。

 

みたいな事をおっしゃっていました。

 

最近、税理士業界は価格競争に思いっきりさらされています。

 

しかし、税理士の仕事は本来、価格競争があるのは好ましくないと思います。

それは、時間単位で計算出来るものではないからです。

 

価格競争に巻き込まれてしまうと、税理士としての品質が落ちるでしょう。

馬車馬のように作業に追われ、本来の仕事であるべき勉強が出来なくなりますから。

 

私たちは、自分たちが勉強してきたことや経験してきたことを、

お客様が必要としているタイミングで提供します。

 

”税理士は何もしてくれない”

 

そう思われている経営者の方、その税理士は恐らく価格競争に巻き込まれているか、

もしくは勉強しない税理士なのかもしれません。

 

”税理士は何もしてくれない”

 

そういうイメージが蔓延してしまうと、

税理士の本来あるべき姿が失われていってしまうのではないかと心配になります。

 

 

これは、大変悩ましい限りです。

 

しかし、「一生勉強」を決意して税理士になったのだから、胸を張って仕事をしていこうと思います。

 

 

 

 

2012年

7月

24日

お稲荷さんのある土地

国税庁は、713

「庭内神祠(ていないしんし)」の敷地等についても相続税の非課税財産とする取扱いを発表しました。

 

「庭内神祠」とは、

個人の敷地内に、お稲荷さんや社などの 不動尊等があり、日常礼拝に供するものをいいます。

 

 

今までの取扱いは、

「庭内神祠」そのものは非課税財産であるが、その敷地等は非課税財産には該当しないとされてきました。

 

 

しかし、平成24621日の判決により、

社会通念上、一体のものと言えるものてあれば、その敷地等も非課税財産とするとされています。

 

 

ただ、お稲荷さん等の敷地がすべて非課税になるのではなく、

その敷地がお稲荷さん等と一体であると認められる部分のみが非課税となります。

 

「一体」とは、どういう状態なのか?

下記の3つの点から判断されることになります。(税務通信より)

 

1)庭内神祠の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性などの現況等といった外形

 

2)設備及び附属設備等の建立の経緯、目的

 

3)現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能面

 

これら3つの観点から、社会通念上一体のものとして、礼拝の対象とされていると言ってよい程度に

密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備は、非課税財産に該当する。

 

とのこと。

 

 

今回の裁判の事例の場合、下記の点から非課税財産とする判決が出ています。

 

→庭内神祠は代々祀られてきたもので、

 

→コンクリート打ちの土台に固着され、

 

→敷地には鳥居や参道が設置され、

 

→小さな神社の敷地内の様相である

 

 

たまに、庭にお稲荷さんのある家を見かけますよね。

今後は、このお稲荷さんの敷地部分についても非課税になるとのこと。

 

 

ただし、敷地全部ではありませんのでご注意を。

あくまでも、一体であると認められる敷地部分です。

 

 

また、これは既に申告が終わっている相続税についても適用できます

「更正の請求」ですね。

 

 

通常の更正の請求は、法定申告期限から5年以内)ですが、

5年を過ぎている場合でも、非課税となるという取扱いを知った日の翌日から2月以内であれば、更正の請求ができます。

 

国税通則法でいうところの

「後発的事由」ということですね。

 

 *法定申告期限が、平成23121日以前の場合は1

 

 

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さて、ここで疑問です。

 

今は日常礼拝に供していない場合はどうなるのでしょう?

 

私見ですが、

上記の取扱いを見る限りは、非課税にはならないということでしょう。

 

しかし、お稲荷さん等を撤去するには、費用がかかりますよね。

その費用は評価から減額できないのでしょうか?

 

 

相続税は、相続人の死亡時点の現況で判断されます。

相続した後に、撤去するとしても、それはあくまでも相続人が相続後に行うこと。

 

自宅の敷地と同じ考え方ですかね。

自宅の敷地を相続したあとに自宅を取り壊しても、取り壊し費用は評価減出来ませんので。

 

しかし、日常礼拝に供さなくなったお稲荷さんというのも祟りがありそうで怖いですね。

 

祖父母の代まで日常の礼拝に供していたが、代が代わったら放置されるようになった…

 

信仰心の少なくなった現代、あり得るお話だとは思いますが、放置は少し怖いような…